EU CBAM(炭素国境調整メカニズム)と輸出企業:2026年の規則・50トン基準・排出量データ
EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM、Carbon Border Adjustment Mechanism)は、鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料、水素、電力の輸入に炭素価格を課す制度です。本格適用期間は2026年1月1日に始まりました。暦年中にCBAM対象品を50トン以上輸入するEUの輸入者(水素と電力は数量を問いません)は、認可CBAM申告者(authorised CBAM declarant)となる必要があり、2027年2月からCBAM証書を購入し、2026年の輸入分に係る最初の年次CBAM申告を2027年9月30日までに提出しなければなりません。EU域外の生産者に直接の義務はありませんが、EUのバイヤーは検証済みの排出量データを求めてきます。このデータがない場合、バイヤーはデフォルト値を使用できます。
公式情報での確認日:2026-10
概要
CBAMとは何か、どの物品が対象か
CBAMは、Regulation (EU) 2023/956により設けられた、特定の輸入品に内包される温室効果ガス排出量に対するEUの課金制度で、EU域内の生産者がEU排出量取引制度(EU ETS)の下で負担するものに匹敵する炭素価格を、輸入品にも負担させることを目的としています。鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料、水素、電力が対象で、一部の鉄鋼・アルミニウム製品などの川下製品も含まれます。正確な対象物品は、Annex Iに統合品目表(Combined Nomenclature、CN)コードで列挙されています。8桁のCNコードをAnnex IまたはEUのTARICデータベースで確認してください。
2023年10月から2025年末まで、CBAMは報告のみの移行期間として運用されました。認可、証書、年次申告を伴う本格適用期間は、2026年1月1日に始まりました。
50トン基準と認可CBAM申告者
2025年10月20日に発効したRegulation (EU) 2025/2083は、CBAMを簡素化しました。主な変更は単一の基準の導入で、暦年中のCBAM対象品の輸入が正味重量50トン未満の輸入者は、CBAMの義務を免除されます。欧州委員会は、これにより約182,000の輸入者が免除される一方で、排出量の99%超が引き続き対象になると見込んでいます。水素と電力はこの基準の対象外で、数量を問わずCBAMの対象です。
50トンに達する見込みの輸入者は、認可CBAM申告者の資格を保有する必要があり、上限に達する前に申請すべきです。2026年3月31日までに申請した輸入者は、申請の処理中も輸入を継続できました。申請者はEU加盟国に設立されている必要があり、輸入者が設立されていない場合は、その間接代理人が申請しなければなりません。したがって、DDPで販売し、自らが輸入者となる場合、CBAMは貴社の義務であり、認可を保有する間接代理人を通じて履行します。
証書と期限
- CBAM証書は、2027年2月から、CBAM Registryと連携する共通の中央プラットフォームで購入します。
- 2026年に輸入された物品の証書価格は、輸入した四半期のEU ETSオークション落札価格の平均です。欧州委員会は2026年第1四半期について75.36ユーロ、第2四半期について75.28ユーロを公表しました。2027年からは週次の価格を公表します。
- 2027年から、基準を超える認可申告者は、各四半期末に、年初から輸入したCBAM対象品に内包される排出量の少なくとも50%に相当する証書を保有しなければなりません。
- 申告者は毎年9月30日までに、前年の輸入分に係る年次CBAM申告を提出し、対応する数の証書を償却します。2026年分の最初の申告期限は2027年9月30日です。
- 余剰の証書は、証書を償却した年の10月31日までに請求すれば買い戻してもらえます。
EU域外の輸出企業が準備すべきこと
義務を負うのはEUの輸入者ですが、排出量データは生産者から得られます。欧州委員会のガイダンスは、EU域外の施設の運営者に次のことを求めています。
- EU Loginアカウントを作成し、CBAM Registryのオペレーターポータルに施設を登録する。
- EUの算定規則に従い、各施設の排出量と各CBAM製品に内包される排出量をモニタリングし、算定する。
- 認定CBAM検証機関に連絡する。最初の検証機関は2026年末までに認定され、排出量の検証は2027年初めに始まる見込みです。
- 検証済みのデータをEUのバイヤーと共有する。バイヤーは年次申告にこのデータを必要とします。検証済みの実績データがない場合、申告者は欧州委員会が公表したデフォルト値を使用できます。
- 生産国で炭素価格を支払っている場合は、その証拠を保管する。CBAMはそれによる減額を認めており、2027年からは、欧州委員会が炭素価格制度を持つ第三国についてデフォルトの炭素価格を公表する場合があります。
インボイスと契約で押さえる点
バイヤーが基準を確認して正しく申告できるよう、コマーシャルインボイスとパッキングリストに、各CBAM製品の8桁のCNコードと正味重量を記載してください。排出量データを誰がいつまでに提供するか、CBAMの費用を誰が負担するかは、売買契約で合意します。DDPでは売主が輸入者となるため、CBAMの義務と費用は売主にあります。それ以外のインコタームズ条件では、輸入者であるEUのバイヤーがこれを負担し、通常は価格交渉に反映します。
手順
- 製品のCNコードがRegulation (EU) 2023/956のAnnex Iに列挙されているか確認しましょう。
- EUの各バイヤーに、認可CBAM申告者であるか、年間でどれだけのCBAM対象品を輸入するかを尋ねましょう。
- CBAM Registryのオペレーターポータルに施設を登録し、排出量のモニタリングを始めましょう。
- バイヤーの9月30日の申告に間に合うよう、認定CBAM検証機関による検証を手配しましょう。
- インボイスにCNコードと正味重量を記載し、契約で排出量データとCBAMの費用を合意しましょう。
通常必要になる書類
- 各CBAM製品の8桁のCNコードと正味重量を記載したコマーシャルインボイス
- パッキングリスト
- 施設と製品ごとの排出量データ、および検証報告書
- 生産国で支払った炭素価格の証拠(ある場合)
- バイヤーまたは税関が求める場合は原産地証明書
よくある問題とその防ぎ方
対処法: バイヤーまたはその間接代理人が認可を受けるまで、CBAMの下で物品を通関できません。出荷前に資格を確認してください。
対処法: バイヤーは欧州委員会のデフォルト値を使用できますが、貴社の実際の排出量を反映しない場合があります。今からモニタリングを始め、検証機関を早めに予約してください。
対処法: 認可CBAM申告者の資格を保有する間接代理人を指定し、DDPの見積もりにCBAM証書の費用を織り込んでください。
対処法: バイヤーが物品がAnnex Iに列挙されているかを確認できるよう、8桁のCNコードを追加してください。
出典
- Regulation (EU) 2023/956 establishing a carbon border adjustment mechanism EUR-Lex
- Regulation (EU) 2025/2083 amending Regulation (EU) 2023/956 as regards simplifying and strengthening the carbon border adjustment mechanism EUR-Lex
- Officially published: simplifications to the Carbon Border Adjustment Mechanism (CBAM) European Commission, DG Taxation and Customs Union
- Price of CBAM certificates European Commission, DG Taxation and Customs Union
- CBAM has launched: what changes for me (webinar takeaways) European Commission, EU Customs & Tax eLearning
- The EU Carbon Border Adjustment Mechanism (CBAM) Environmental Protection Agency, Ireland (CBAM competent authority)
- CBAM Certificates Environmental Protection Agency, Ireland
- Carbon Border Adjustment Mechanism (CBAM) Malta Climate Action Authority
- Preparatory work related to the authorised CBAM declarant status is under way Finnish Customs
規則は頻繁に変わります。このノートは上記の出典に基づく実務上の案内であり、法的助言ではありません。出荷前に、規制当局、貴社の輸入者、または免許を持つ通関業者に最新の要件を確認してください。
貿易ノート
よくある質問
CBAMはEU域外の輸出企業にも適用されますか?
直接は適用されません。義務は認可CBAM申告者であるEUの輸入者にあります。ただし、CBAM対象品の輸出企業は検証済みの排出量データを求められ、DDPで販売して自らが輸入者となる場合は、認可を保有する間接代理人が必要です。
CBAMの50トン基準とは何ですか?
暦年中のCBAM対象品の輸入が正味重量50トン未満の輸入者は、CBAMの義務を免除されます。水素と電力は数量を問わず対象です。
輸入者はいつCBAM証書を購入しなければなりませんか?
2027年2月から、共通の中央プラットフォームで購入します。2026年の輸入分に係る最初の年次CBAM申告と証書の償却は、2027年9月30日までです。
生産者が排出量データを提供しないとどうなりますか?
申告者は、実際の排出量の代わりに欧州委員会が公表したデフォルト値を使用できます。検証済みの実績データがあれば、バイヤーは貴社製品の実際の排出量を申告できます。
CBAMはどの製品が対象ですか?
鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料、水素、電力で、一部の川下の鉄鋼・アルミニウム製品も含まれます。正確なCNコードはRegulation (EU) 2023/956のAnnex Iにあります。
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